◆PV ◆ラジオ ◆インタビュー ◆ノベル ◆サウンドドラマ ◆キャラクターボイス ◆レポート
「ひ、ひいぃ、ひ、ひいぃ、ひいぃぃ、ひ、ひ、ひいいぃぃ!」
鵜野うずめ、中二女子、床のもふもふのカーペットをさっきからかきむしりながらも、体は文字通りどん引き状態で、ホラー映画を鑑賞中。
「うずめちゃん、ひい、ひい、うるさい!」
側にはこれを笑いながら見ている、うずめの妹みこ。
みこの提案で部屋は明かりを消してわざと暗くしている。
モニターからの青白い光を受けた、うずめの顔、涙目。
「うひ、うひ、ひいぃぃ、そっちに居る! そこに居るのに!」
涙目のうずめ。
「うずめちゃん! うずめちゃんの声は届かないんだよ!」
情け容赦ない、妹の突っ込み。
「だって…だって…」
もごもご言いながらも、モニターから目を離すことができない。
だいたい、ホラー映画のなにがおもしろいの? うずめにはわかんなかった。全然わっかんなかった。
怖いのがおもしろいってのが、わかんない。
怖いのは、怖いでしょ! と、うずめは思う。
「ひ、ひぃ、いぃぃ…」
情けないと本人も思ってはいるのだが、どうしても声が漏れてしまう。
「ひ、ひ、ひ…いぃぃ」
「怖くない、怖くない」
妹はポテトチップの最近出た関西風たこ焼きマヨネーズ激辛味をバリバリ齧りながら
「そんなに怖いのなら見なきゃいいじゃない」
と突き放すように言う。
「今、これがクラスで流行ってるからこれを見ないと仲間に入れてもらえないんだもん」
事実だった。でなければ誰が好きこのんでこんなものを。
夢に見るなあ、きっと。
その夜、うずめはおかげさまで眠るのも怖かった。
明け方まで、電気つけっぱなしの部屋で悶々としたうずめがようやく、うとうとっとしかけたと思ったら、その眠りは妹に激しく体を揺すられてむりくり起こされた。
「うずめちゃん、うずめちゃん起きなよ! 学校、学校! 遅刻! 遅刻」
階下からお母さんの鋭い声も聞こえる。
「うずめー、起きた〜!」
「とっくに起きてますー!」
うずめの精一杯の抵抗だ。