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グオオオオオオオオオオ!
「きゃああぁぁ!」
「うわぁぁ!」
「なんだ、あれは!」
日曜の朝の子供向け特撮番組で聞いたことがある人々の悲鳴と叫び。
「きゃあああぁぁ!」
「こっちに来るぞ!」
「逃げろ! 逃げろぉ!」
そして、これまたさんざん見たことがある人々が逃げ惑う光景。
ギャオオオオォォ!
ウギャアアァァ!
一歩進んでは恐竜は天井に向かって叫び、また一歩進んでは足下で腰を抜かしている人々に早く逃げないと踏み潰してしまうぞぉ! とばかりにティラノサウロスは吠えまくっている。
これがもし街角の雑踏であったなら逃げ遅れた子供が人々に置き去りにされ、その中で泣きじゃくり…となるのであろうが、コミフェスにおいてはせっかく並んで購入した薄い本やポスターやフィギア、タペストリーや団扇や抱き枕が破けた大きな紙袋から飛び出して床へと散らばる。
それをしゃがみ込んでかき集める人の上に人が倒れ、その人が抱えていた薄い本の束が落ち…
「俺の嫁がぁ!」
悲痛な叫び声をかき消すティラノサウロスの咆吼!
グオオオオオオオオオオ!
「逃げてください!」「早く出口へ!」「押さないで! 危険です!」コミフェスのスタッフが声を張り上げる。「ここは『いのちをたいせつに』ですからぁ!」