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駅への道をうずめが走る。
走る。走ってる。そうは見えないかもしれないが、走ってるんだよ、これでも!
併走するサラリーマン、OLのお姉さん、これがどういうわけか、いつも同じメンバーで、同じ時間に同じように駅へと走るのだ。
そして、改札を抜けていつもと同じ車両のいつもと同じドアの前。
乗車率百八十パーセントの車内へと、背中から人に押されて中へ。ぎゅうぎゅうのぎゅうぎゅうだ。
「むぎゅぅぅ…」
人と人に押し潰されるのも、いつものこと。
だが、いつもとちがうことが今日、一つ起きていた。
その満員電車の中で押しくらまんじゅうしている間に、うずめの通学鞄にカードが押し込まれていたのだった。
誰かの手で…
うずめがそれに気がついたのは駅から学校への通学路。
そこで、同級生の羽月まないちゃんが、うずめにチラシを差し出して話しかけてきたのだった。
「うずめちゃん、頼みがあるの」
チラシには『カード部! 部員募集!』とある。
まないはうずめの前に回り込むと手を合わせて拝みながら言った。
「あのね、まだできたばっかの新しい部だから、うずめちゃん、部員になってくれないかなって思って!」
カード部? 確かに聞いたことがない。なにするんだろう? カードを研究?
うずめは小学校の頃にカードゲームなるものはやったことはある。たしなんだ、というべきか。
たしなんだ、という程度だったが、カードで誰かと戦って負けたという印象がうずめにはなかった。
カードでバトルすると、いつも勝っていたような気がする。
だから、かもしれないが、連戦連勝しかしないので、いつしかなんだか回りの友達に申し訳なくなって、やらなくなったんだ、と今になって思う。でも、そんなうずめのとまどいはおかまいなしに、まないちゃんはひたすら
「お願い、お願い、お願いね」だった。
そんなふうにやたら「お願い」されて、しかたなく手にしたチラシを鞄にうずめはねじ込んだ。
その手元を見ていた、まないがめざとく<それ>を見つけたのだった。
「そのカードなに?」
「え? カード?」
まないの視線の先、うずめの鞄の中に数枚、いや十数枚のカードが散らばっていた。
「なにこれ?」
「なんだ、うずめちゃん、カード好きなんじゃない」
うずめが「いや、そんなことはなくて、これは私のじゃなくて…」という間もなく、まないは「じゃ、部員として登録しておくね、ありがとー」と言うなり走り去っていってしまった。
残されたうずめ。その手にカード。
なんだろ、これ?
さらに! 後ろからクラスメートの群れがやって来るなり、うずめをバンバン叩きながら「うずめ、貸したDVD見た? おもしろかったっしょ!」と言った。
「あ、見たよ…見たけど」
「今日、パート2のDVD持ってきたからね!」
「……パート2」
うずめはどよーんとした…