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学校ってところは生きていくにはかなり厳しいところだ。
授業をなんとなくやりすごしたが、最後によくわからない宿題を言い渡された。
A4の紙になんでもいいから将来の夢を書いてこいというのだ。
「なんでもいいのよ。本当にどんなことでもいいから。もしも、紙が足りなくなったら先生のところに来てください」
いやいや、うずめにとっては自分の夢を書くのにA4の紙一枚だって広すぎるくらいだ。
今の願いっていうのなら、それは…
「ホラー映画がとりもつ友達ではない、友達ができるとうれしいなあ」誰に言うわけでもなく、うずめはつぶやいた。そして、さらに「ぼっちはかんべん」
自分で自分の言葉を肯定して一人で小さく頷いてみたりする。
うずめはシャーペンを持ち直して、とりあえず気持ちを素直に綴ってみるかと書き始める。
「誰かと…なんかうわーっとなったりしたい」
ん…
うわーってなんだ。書いた端から疑問だ。
「全然具体的じゃないんだよ…」
夢が具体的じゃないから、希望が具体的にならないんだよ。
うずめは時につぶやき、時には心の中でそんなふうに自問自答を続ける。
「いかん、いかん、うずめのよくないところ、気がつくと負のスパイラルの思考の渦に巻き込まれて、あれー! ってなるところだ」
んで、あれーってなんだよ。
あれーってのは嬉しいのか? 悲鳴なのか? なんなんだ、あれー! って!
気がつくとうずめは一人で、ふふふふと笑っていた。
教室の片隅、窓側の陽の差し込む特等席。ぽかぽかと暖かくすぐ眠くなるここがうずめの席。
そこで、ふふふと一人で笑っているうずめ。
不気味だなあ、と自分でもわかっていたが、それでもふふふふという笑いは止められなかった。
うずめは妹がいる。なのに、よくこうやって一人でぶつぶつ言ってるし、一人であれこれ悩んだり、いわゆる妄想したりっていうことが好きだった。精神的一人っ子なのよね、と言ったのは、うずめの母。それを聞いていた妹も「そーなんだよね」と激しく同意して言った「うちはお姉ちゃんという一人っ子と私という一人っ子が二人暮らしている家なんだよね」
ガタン! と音を立て、うずめは席を立った。
手にはシャーペンと将来の希望を書く紙。
「ここに居るからなにも書けないんだ」
ダメもとで保健室へと向かってはみたが案の定、外の廊下まで気分が悪い、お腹痛いと訴える人はあふれかえっていて、定員オーバー。
裏庭へ出る。
日の当たらないところに腰を下ろして、うずめは「ふう」と、とりあえず溜息をついた。
なにを書けばいいんだ。