ファンタジスタドール

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アニメ「ファンタジスタドール」脚本家の1人である、じんのひろあき氏による、
ウェブ限定のオリジナルストーリーノベル!毎週更新中!

ファンタジスタドール
お砂糖とスパイスと何か素敵なもので女の子はできている

著:じんのひろあき イラスト:Anmi 
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回

行く手を遮る家族連れの車は目の前に飛び出してきたまま、いっこうに前に進む気配がない。それもそのはず、おばあちゃんらしき人が、杖をつきながら孫であろう小学生の女の子に手を引かれて車に乗り込もうとしているではないか。
「ユキ、これ以上、進めない!」ナナがそう言ってギアを下げた。ユキが聞き返す「進めない? っていうとどうなるの?」
ナナが言う「前に進めないなら、後に下がる、グオの横、すり抜けて向こうに出る!」
「できるの、そんなこと!」ユキが聞き返すとナナは「自信はないけど、でも、それしかない! ここから先はちょっと荒っぽくなるからね!」ぐっとアクセルを踏み込んだ。
カソ研のバンはタイヤから白煙を出しながら、勢いよくバックした!
ギヤアアアァァ!
前に突進してくるグオの横、そして、停めてある他の車の鼻先をかすりながら、かろうじて抜けた…
「よし! 抜けた、これでこのまま!」
そこまで言った時に、バンは後ろ向きに駐車場のフェンスにぶつかった。
ガッシャン!
バキバキバキバキ…
「わあああぁ」
ナナがギアを入れ直して前へと進もうとするが突き破った駐車場のフェンスが絡まって、前に出ることができない。
駐車場の二階のフェンス際で宙ぶらりんの車。
ユキが運転席から振り返り後席に向かって「降りて、早く!」と言うよりも早く、スライド式のドアを開けて、うずめ達は外へと飛び出した。
うずめ、ささら、カティア、小明、ヨモギ、黒髪のツインテ、銀髪のツインテ。そして、それに大学生のコンタが続こうとするが、その彼の目に飛び込んできたのは、フロントガラスいっぱいに迫ってくる、自分達が長い時間掛けて生み出した、人造ティラノサウロスの凶暴な顔だった
「グオ、来ちゃダメ!」ナナの叫び声もティラノサウロスには届かない。
ガン!
バンの正面、ダメ押しのように恐竜の頭突きが綺麗に決まる。
カソ研の車は柵をブチ破り駐車場の二階から空中へと車の半分以上が飛び出した。
「わああぁぁぁああああ」車の中で慌てふためいているユキとナナ、その向こうで降り損なってあわあわしているコンタの顔が見える。
うずめが言う「落ちちゃう…車ごと!」。
ささらが言う「マスター、ここはカードを使うとこだよ!」
「カ、カード…?」言われて手持ちのカードを取り出して繰りながら、うずめ「でも、こういう時はなんのカードがいいの?」。
マドレーヌがカードを選ぶ手を貸してくれながら「例のほら、お豆腐と一円玉のカードを」。
一円玉は両替を頼んでもこれ以上崩すことはできない、だからお豆腐のカードと一緒に使うと、崩れないクッションができる。そこまでは、うずめもわかっている。二枚のカードを選び出して「これで…いいの」なんか足りないと、うずめは思った。
だけど、なにが足りないんだろう?
その答えは小明がさらに抜き出した一枚のカードにあった。
それは『風呂敷』と書かれたカード。
うずめが「で? で? それは、なに?」と聞くが、ささらが「いいから、この三つを使って!」と、うずめのデバイスを持つ手を掴んで目の前へ。
『一円玉』『お豆腐』『風呂敷』がデバイスへ。「マスター! それをあのバンの落ちるところへ」ささらが指差す。
光に包まれた真っ白いお豆腐状のお豆腐が今、まさに落下せんとしているバンの向こうへとくるくると飛んでいった。
うずめは「それで…どうなるの?」と、自分が使ったカードの結果が知りたくて、バンが落ちかけているその柵から下を見る。
お豆腐は真下で白くて大きなふかふかのマットと化し、うずめが見ている間にもそれはまるで風呂敷を広げていくように、どんどん面積を増していってる。
「お、おおお!」うずめが思わず感嘆の声を漏らす。


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