ファンタジスタドール

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アニメ「ファンタジスタドール」脚本家の1人である、じんのひろあき氏による、
ウェブ限定のオリジナルストーリーノベル!毎週更新中!

ファンタジスタドール
お砂糖とスパイスと何か素敵なもので女の子はできている

著:じんのひろあき イラスト:Anmi 
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回

バルーンは浮力を得て、ゆっくりと上昇し安定していく。
それとほぼ同時に、カソ研のバンにエンジンがかかった。
車の中のユキは「まだ走れるか?」エンジンを吹かして、アクセルを踏み込んでみる。
ぎゃぎゃぎゃぎゃ…と、なにが擦れているのか? 軋んでいるのかよくわからない音がして、車体がゴウゴウゴウと嫌な音を出して震えたかと思うと、車は動き出した。
「いける!」ナナは車の床を踏み抜かんばかりにアクセルに体重を掛ける。
ぎゅるるるるる…
バンは急発進した。
「いひゃあああ!」ユキの声が聞こえたかと思うと、車はさっきグオが爆走していた大通りとは反対方向、安売り王のショッピングセンターの裏通りへと飛び出して行った。
グオオオオオオオオオオ!
恐竜が吠え、すぐさま後を追う。
それに引っ張られて、ヨーヨーのワイヤーで繋がっている遙か上空の宙に浮くシュウマイは、ぐん! という強い力で引っ張られる!
「わあっ!」シュウマイの上、エビの回りで、うずめ達が声を上げた。
みなはとっさにシュウマイのどこかにしがみついたが、うずめだけ横に二回転がって端から落ちそうになる。
「う、うわぁ!」
咄嗟に手を伸ばし、うずめの手をはっし!とヨモギが掴んだ。
「うずめちゃん、手を離さないで!」
「ありがと、ヨモギちゃん!」
ささらがすぐさま「マスター、なに落ちてんのぉ!」と、小明と共に、うずめの体を掴んで引き上げる。
「私だって、好きで落ちてるんじゃありませんよぉ」
ダダダダダ…
グオが裏路地へ。
続いて、空飛ぶシュウマイも裏路地へ。
そこは、屋台街。
シュウマイの看板、シュウマイの文字。
焼売、焼売、焼売、シュウマイ、焼売…
ありとあらゆる焼売の店が並び、点心の良い香りが漂っている。
「これ、なんなの、シュウマイ天国みたいな…」うずめが言った。
それにヨモギちゃんが答える「この街はシュウマイで町おこしをしようとしているんだよ。聞いたことない、シュウマイ消費日本一を目指してね」
先頭を走っているのはカソ研のバン。
さんざんティラノサウロスの求愛(?)の頭突きを受け、両サイドと後ろをベコベコに凹まされ、窓ガラスはヒビだらけ、車体はあちこちひん曲がり、しかも、どこか明らかに故障しているらしく、黒い煙を下の方からもくもくと吹き出している。
その後ろ、まだ車に書かれた恐竜の画を、自分の仲間か、もしかしたらガールフレンドかなにかと勘違いして、追いかけ続けているティラノサウロス。
さらにその恐竜の尻尾に巻き付けられたヨーヨーのワイヤーが空中へ伸び、空を漂っているシュウマイのアドバルーンを牽引している。
シュウマイの上に、うずめとヨモギ、そして、そのドール達が振り落とされまいと、必死にしがみついている←今、ここ。

つづく。


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