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「ただいまぁ」とうずめが家に帰ってくる。
夕御飯の時間、日はもうとっぷりと暮れている。玄関で待ち構えていたのは妹、みこ。
「お姉ちゃん、今日はコミフェスに行ってきたんでしょ? なに買ってきたの? なに買ってきたの? 見せて見せて見せて」と、うずめにまとわりついて言う。
みこは今日、うずめ達がどんな大冒険をしてきたのか、知るよしもない。
にしても、だ。と、うずめは思う。五人のドール達をマニホールド空間に戻らせておいて良かったよ。
「見てきただけ、なにも買えないよ。だって、そもそも、そんなにお小遣いもらってないじゃん、私達」と、うずめが言うと「それはそうだよね」みこもそれきり黙ってしまった。
「ご飯はあとで食べる…かも」と告げ、うずめは二階の自分の部屋へ。
明かりを点けるとデバイスを手にしドール達の召還の言葉LINGOをつぶやく。
天翔る星の輝きよ…時を越える水の煌めきよ。
今こそ無限星霜の摂理にもとづいて、その正しき姿をここに…あらわせ!
そして、たいていは「マスター!」と、元気よく飛び出してくる、ささら達であったが、さすがに今日は「疲れたぁ」と、こちらの空間に現出するなり、その場にしゃがみ込み、ゴロゴロと寝転がり、ドテっと俯せになった。
もう今にもそのまま寝入ってしまいそうな雰囲気だ。
うずめが頭を深く下げ「本当にみんな、お疲れ様でした」と労をねぎらう。
小明が言った「でも、まだ何も解決してないよ、マスター」
「うん、それはそうなんだけど…みんな、大変だったし、疲れているのもわかるんだけど、お風呂とか入らない?」
良い提案だと思ったのだが「あたし今日はお風呂とかはいいや」とカティアに言われ、ささらにも「明日、朝、早起きしてシャワーにする」と言われる始末だ。
ただ、そんなドール達の中でも、しめじだけが黙りこくっている。
「しめじちゃん、お風呂入ろうよ。これはマスターである私の命令です」
今日は湯船に、うずめとしめじの二人きり。
向かい合い体育座り。
「二人きりだと、けっこう余裕だね」うずめが言った。
しめじの顔、明るさを取り戻さない。
そして、しめじはぼそりと言った。
「グオは今頃、なにしてるかな」
「電源を見つけて充電中。だよ、きっと」とりあえず、うずめはそう言った「さっき車で送ってくれた大学生さん達もなにかグオの足取りがつかめたらすぐにメールしてくれるって言ってたし。そもそもあの恐竜のお腹の中にはヨモギちゃんのカードが一枚まだ入っているわけだから…なんとしてでも見つけ出して、カードをヨモギちゃんに返してあげないと、ね!」
「そうだよね」
「私達はもう一回グオに会わなきゃなんないんだよ、どうしてもね」
「そうだよね」
「そうだ!」うずめは一瞬、湯船で立ち上がった「今日みたいな疲れを取るのには、とっておきのアロマを入れよう」
「え、いいの? マスター?」
「こんな時のためにね、バブルアロマがあるんだよ。二人で泡だらけになろ」
「はい、マスター」しめじが少し微笑んだ。
ミントとローズの二種類、どっちがいい? と、うずめは聞いた。
そして、しめじのリクエストにより、ミントの香りのバブルがお風呂に溢れ返ったのだった…