ファンタジスタドール

Special

◆PV ◆ラジオ ◆インタビュー ◆ノベル ◆サウンドドラマ ◆キャラクターボイス ◆レポート

アニメ「ファンタジスタドール」脚本家の1人である、じんのひろあき氏による、
ウェブ限定のオリジナルストーリーノベル!毎週更新中!

ファンタジスタドール
お砂糖とスパイスと何か素敵なもので女の子はできている

著:じんのひろあき イラスト:Anmi 
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回

幸いにも、恐竜の歩みは遅かった。
歩道に停めてあった自転車が次々とティラノサウロスの頭突きで跳ね飛ばされていく。
ドスっ! ドスっ! ドスっ! 地響きをあげてゆっくりと歩いていく恐竜。
その背中に必死に掴まる、しめじ。
恐竜が一歩、また一歩と歩みを進める度に体は大きく上下し、それにしたがってしがみついているしめじの体も上下に恐竜の硬い皮膚の上でバウンドしているが、それもリズムがとれてきて、うまく乗りこなしているかのように見える。
その後ろから「しめじー!」と駆けてくる、うずめ達。
またしても、ドールのみんなは走るのが速い。
うずめはこうやって、一緒に走る人達の背中を体育の授業だったり、運動会のかけっこなんかでよく見た風景だな、なんてノンキなことをこんな時に思い出したりした。
一生懸命走ってはいるのだけれど、いつもいつも目の前に広がるのは自分よりも早く走るクラスメートの背中の方が多かった。
そして、その背中がだんだんと遠ざかるのも、いつものことだった。

「うずめちゃん!」後ろからのヨモギの声、うずめは振り返る。
ヨモギと二人のドールがこちらに向かってそれはそれは綺麗なフォームで走って近づいてくる。
あっという間にひーはー言いながら走っている、うずめの横に並んだ。
「全部、元通りにしてきたよ!」ヨモギはそう言って後ろを示して、うずめに笑いかけた。もちろん、走りながら、だ。
うずめは自分たちが飛び出してきた体育館のドアの穴を振り返って見る。
恐竜の開けた穴は見当たらない「あれ?」うずめは間の抜けた声を出した。
なにが起きたのか? と、うずめの走るスピードは遅くなり全力疾走している、ささら達のグループからさらに離れていきそうになる。
「うずめちゃん、走って!」ヨモギがグイッ!と手を引き背中を黒髪と銀髪のドールが「それ!」「がんばって!」と押してくれる。
「どうやってあれを元通りに?」うずめが言う。
うずめの目の前にヨモギが一枚のカードを取り出して見せた。
「修復カードを使ったの」
「え? なにそれ?」
「このカードを使うとね、どんなにメチャメチャになったものでも、あら不思議。元あった通りに戻してくれるんだ」
「そんな便利な!」
「私、片付け苦手だから、このカードがあるおかげで、いっつもずいぶん助かってるんだ」
「片付けてくれるカード?」
「うずめちゃんもこのカード、持ってるんじゃないかな」
「え? ホントに、本当に?」
その時、ファンファーン! と真横の車道で車のクラクション!
走る、うずめ達の一団に後ろから追い上げてきて今、並んだのは一台のバン。
車体の横には大きく恐竜のシルエットが描かれその横に東京東西大学仮想現実化研究会一号車というロゴ。恐竜のシルエットはもちろんティラノサウロスの横顔であり、並んだ無数の牙がある口を開いていて笑っているかのようだが、妙にリアルな画だ。
車が走るうずめ達の横に停まった。
助手席の窓が開いて女子大生が顔を出して手招きする「乗って、後ろに!」。
「へ?」と、うずめ。
「走ってたって追いつかないよ」と女子大生。
ぎゃあぁぁ! と、勢いよく、ささらがバンのドアをスライドさせて開けると、小明、マドレーヌ、そして、うずめが先に乗りなよ、とヨモギちゃんと二人のドールを乗り込ませて、自分が一番最後に飛び乗った。
ガシャン! とドアが閉まり、ぎゅるるる! とタイヤを鳴らしてバンは走り出す。
ドスっ! ドスっ! と、先を歩くティラノサウロスを追って!


1 2 3 4
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回

News >>
World >>
Staff & Cast >>
Goods >>
Special >>
Media mix >>

▲ Page Top

(C) 2013 ファンタジスタドールプロジェクト/FD製作委員会