ファンタジスタドール

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アニメ「ファンタジスタドール」脚本家の1人である、じんのひろあき氏による、
ウェブ限定のオリジナルストーリーノベル!毎週更新中!

ファンタジスタドール
お砂糖とスパイスと何か素敵なもので女の子はできている

著:じんのひろあき イラスト:Anmi 
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グアン!
グアン!
うずめの悲鳴「ひいぃ!」。
ハンドルを握るナナの声「なに、私達が乗ってるこの車がなんかしたっていうの?」。
じっとさっきから恐竜の視線を冷静に追っていた小明がその理由に気づいた「車に描かれている恐竜のシルエットに反応してる!」
確かに!
描かれている恐竜のシルエットを友達だと思ってじゃれついてきているのかもしれない。
じゃれつくのがこんな猛烈な頭突きの嵐なんですか? と、うずめは思うが車内のどっかに掴まっているのが精一杯で言葉にはならない。
「ナナ、ハンドル切って! 逃げるしかないよ!」
追っかけているはずが、なんで追っ掛けられているの? うずめが珍しく突っ込みを入れようとするが、これもまた言葉となって出てはこない。
バンのハンドルを大きく切るナナ。
きひひひ!
タイヤが鳴き声を上げるほど軋ませて、すぐ側に建つ安売りショッピングセンターの駐車場の入り口へと向かう。
四階建ての立体駐車場。
入り口のゲートにはまず駐車券を取るようにと黄色と黒のバーが目の前、横一直線に行く手を阻んでいるが、その前でユキさんはブレーキを踏まずにアクセルを踏んだ。
ばっきゃん! という音を立ててそのバーが吹っ飛ぶ。
こういうシーン、なんかの映画では見たことがあるけど実際に目の当たりにするとは!
助手席のユキがハンドルを握るナナに食ってかかる。
「なんで立体駐車場の中なんかに入るのよ!」 それにナナが言い返す「じゃあ、他にどこ行けってのよ!」
「ナナ! あんたわかってんの? この駐車場は四階までしかないのよ!」
「だから何?」
「ホラー映画の掟を知らないの?」
「なにそれ?」
「なにかに追っかけられて、上へ逃げようって、言った人達はたいてい捕まっちゃうもんなのよ」
「あ! そうだ!」うずめが声を上げる。数日前に無理やり見なきゃならなかったクラスメートが貸してくれたホラー映画には確かにそういうシーンがあった。
「後ろを見て!」ナナにそう言われて車の中の全員が、もう遙か後方、駐車場の入り口ゲートのところで足止めを食っているグオの姿を見た。
ナナもまたバックミラーでその様子を再確認し「グオはまっすぐ立つと八メートル。この駐車場の天井までは四、五メートルってとこでしょ。たとえここまで追ってきたとしても、頭がつっかえて、そうそう自由には動き回れない」
「本当に?」と、ユキはナナをすがるように見る。
「たぶん…」どうやらナナもまた自信があるというわけでもないようだった。
そして、うずめが申し訳なさそうに報告する。
「グオ、頭を下げて入って来ます」

つづく。


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