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グオオオオオオオオオオ!
ティラノサウロスは吠える。
ヨモギちゃんが悲痛な声を上げた「カードが!」それにマドレーヌが答えた「大丈夫、呑み込まれただけです、噛み砕かれたわけじゃない」。
となると、カードは今、恐竜のお腹の中に? うずめはティラノサウロスの首から胴にかけて視線を巡らせるが、ピンクのツインテちゃんのカードがどのあたりあるのか外からでは皆目見当もつかない。
そして、ヨモギが選んだカードの武器、光り輝く目潰しパチンコ弾も、巨大剣玉も役には立たず、あげくの果てにピンクのツインテのカードは呑み込まれてしまった。
ヨモギを先輩カードマスターとしてリスペクト、実戦ってやつを勉強させてもらおうと思ったが、状況はさらに悪化した感じだ。うずめは自分ではまだなにもしていないにも関わらず、もはや手も足も出ないという窮地陥ったように一人で静かにパニくっていた。
「あ、あ…どうすれば、でも、私がここでなんかやっても、結局ヨモギちゃんと同じ事になるかも…」
その時、恐竜はふいに向きを変えた。
体育館の出入り口とは反対方向のドアが開き、関係者が中を覗き見たのに反応したのだ。
グオオオオオオオオオオ…
そして、そのままドス、ドス、ドス、ドスとその奥のドアに向かって歩みを進めていく。
その恐竜の頭部の後ろにへばりついている、うずめのドール、しめじの姿。
さっきからの、うずめ達の声は、しめじには届いて居ないのだろうか?
しめじが張り付いているあたりにこの恐竜のメインスイッチがあり、それを切ることに一生懸命になっているとは、うずめ達にはわからない。
ティラノサウロスがそのドアに頭を突っ込んだ。そして、体を身震いさせて、扉の枠をバキバキバキと壊しながら、外へと…出て行ってしまう…
外へ、出ちゃう…それで、どうするつもりの?
うずめは一瞬、その場で躊躇した。
というのも、ファンタジスタドールには有効範囲というものがある。
マスターからある距離離れてしまうとドール達は自動的にマニホールド空間に戻るのだ。
この場合、体育館から恐竜が出たとしても有効範囲の外まで行ってくれれば、しめじは無事にマニホールド空間に送り返されてくるだろう。
でも、だからといって…
「出て行くよ、あいつ」気がつくと、うずめの側に、ささらが戻って来ていた「どうする、マスター」。
「追いかけるよ」うずめはそう口にしていた。
どうやって? などということまで考える暇はなかった。恐竜のお腹にはヨモギちゃんのドールのカードがあるし、頭の後ろには、うずめのドールのしめじがしがみついている。
ほっとけばマニホールド空間に帰ってくるのはわかっているが、でも、だからってそれをここでじっと待っていれば、大丈夫、ということでもないだろう、うずめはそう思った。それは間違ってはいないと思った。
ささらが聞く「追うのはいいけど、どうやって?」
小明が「走る」
「やっぱそうか、それしかないよね…」うずめはしぶしぶ恐竜が壊して開いたドアから、ささら達と外へと駆け出した。