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というわけで、うずめは先の召還の呪文を教わった。
「天駆ける…天駆ける…」
うずめはもうそれだけで、いっぱいいっぱいだった。
ごにょごにょつぶやきながら道をうつむいて歩いていた。
そして、ささらのリクエストである、大丈夫そうなところ、うずめの家への帰路からちょっと寄り道したところにある、広々とした公園へと辿り着いたのだった。
人の姿はほとんどない。
大丈夫そうな場所、だ。
この公園をよく使う赤ん坊を連れたお母さん達はもう家で夕御飯の準備を始めているだろうし、小学生達はみんなでゲームするのに、わざわざこんな公園に集まったりはしない。
うずめはブランコと鉄棒の側でデバイスを片手に、ようやく覚えた召還の言葉を唱えてみる。
「天翔る星の輝きよ…時を越える水の煌めき…煌めき?」これで合っているのか、不安にはなりながらも、とにかくうずめは続ける「今こそ無限星霜の摂理にもとづいて、その正しき姿をここに…あらわせ!」
たどたどしいが、それでももう、うずめは一字一句間違わずに言えるようになっていた。
そして、それからのほんのわずかな間、うずめは知るよしもないのだが、ドール達は待機しているマニホールド空間と呼ばれている部屋でバトルコスチュームや装備を次々と着替え、装着して光に包まれていく。
うずめは「さあ、こちらの世界へ」という意味だと教わったLINGOの最後の言葉を口にする。
「アウェイキング!」
準備万端整えたドール達の姿は電脳空間で霧散し、現実世界のうずめの側でじゅわわわわ…とみるみる実体化していくのだった。
一つ…二つ、三つ四つ五つの光る影!
さっき中庭に出現したドール、ささらが言った。
「マスター、上等、上等。あたしたちの呼び出しはバッチリ覚えたみたいね」
呼び出すことはできた。
そして、今、うずめの目の前に五人の女の子が、ファンタジスタドールがいる。
「みなさん…が、ドールさん?」
「はじめましてマスター」うずめからすると、お姉さんタイプ。で、眼鏡っ子、いや、お姉さんタイプだから眼鏡女子、って言った方がいいか。そのお姉さん眼鏡女子が「マドレーヌです」と自己紹介した。
続いて黒のリボン、そして、黒っぽい服でゴスにコーディネイトしているクールな女の子が「小明よ」と言って小さく敬礼して見せた。敬礼? なんで初対面の人に敬礼?
「よろしくおねがいしまーす、カティアです」と一番小さな青い髪の青い服の女の子がぺこりと頭を下げて言った。
えっと、この小っこい子がカティアちゃん。
さらに「しめじです!」ピンクの女の子がえへっと微笑む。
えっと、マドレーヌさんに、小明さんに、カティアちゃんに、しめじちゃん…と、うずめが再確認している最中に!
あ! あ! まだダメ! 動かないで!
ちょっと、待って、誰が誰だか!
ああ、ダメ、ダメ、歩き回って位置を変えないで!
せっかくなんとなく覚えたのに、ああ、ダメだ、うわ、ダメだ! うわ、うわ、うわ、
いろんな意味でうずめはパニくっていた。人の名前と顔を覚えるのは正直苦手だ。なんせ、初対面で相手の顔をまじまじと見れないもんだから、印象がどうなのか、とかあんま残らないというもの原因の一つだ。