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気がつくと夕暮れになっていた。
ドールたちは「カードに戻して、見つかって面倒な事になる前にね」と言ってカードに戻った。
一度、駅の方へとうずめは引き返す。
どっと疲れていた。足取りは重い。
夕方の駅。雑踏。駅のスーパーの呼び込み、ティッシュ配り、やたら大きな音でカーステレオをドムドム鳴らしながら走り去る車高の低い車…
うずめが見慣れているいつもの風景。
でも今日はなんだか、ちがって見えた。
夢をかなえてくれるとあの五人は言った。
でも、夢ってなんだろう。
自分の夢。ってなんだろう? そんなことをようやく考える時間ができた。
ドールたちはみんな確かに、うずめのことを「マスター」「マスター」と呼んでいた。
でも、マスターってのは『御主人様』ってことなはずなのに、彼女たちはうずめのことをあんまり『御主人様』扱いしてくれている感じがしない。
「マスター」と呼んでいるだけ。もっと言うなら「マスター」呼ばわりしているだけだとわかってきたのだった。
普通だったら、それはどうよ、って思うところかもしれないけど、うずめはその方が楽だった。
マドレーヌさんに、小明さんに、カティアちゃんに、しめじちゃん…そして、ささらちゃん。
自分の夢のことも問題だけど、でも、それよりもドールたちとこれからどういう生活が待っているのか、なにが起きるのか、わくわくしてくる気持ちの方が強かった。
玄関に入る前、うずめはふと思った。
この先、待っていることなんてなんだかわからない。でも、それをあのドールと一緒になんとかできるかもしれない。たぶん、なんとかなるんじゃないかな、と。
そんなふうに誰かとなにかを乗り越えること。
なにかってのは、もちろんなんだかわからない。
なにかわからないから、なにか、なのだ。
そして、それは結構大変なもの。
一人では立ち向かえない。
でも、仲間がいれば、ドールたちがいてくれれば大丈夫かもしれない。
よし、来い! なにか!
ウエルカムなにか!
もしかしたら、これこそが、自分の…
鵜野うずめの夢なのではないか、と。
『誰かと…なんかうわーっとなったりしたい』
今日、中庭でそう書いたことを思い出した。