◆PV ◆ラジオ ◆インタビュー ◆ノベル ◆サウンドドラマ ◆キャラクターボイス ◆レポート
「あの…」絵のモデルとして姿勢を正したままうずめは言った「話をしても大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫、私は描いてるけど」
「どおやって思いつくんですか、ああいう…お話」
「んと、それはねぇ…私は一人で描いてるじゃなくて、いつも手伝ってくれる人がいるんだ。さっきからずっとここに並んでいる人を整理してくれてたり、このコミフェスの中で私の似顔絵描きの宣伝をしてくれていた女の子がいたでしょ」
「ああ、髪の毛が黒と銀色の…」
「ツインテールの」
「いました、いました」
「そして」と側に立つピンクの髪の子を示して「この子とが手伝ってくれてるから、すごく助かってるんだ」
「手伝うっていうのはどんな風に?」
「黒い髪の子はね、そう…言ってみれば編集さん、私、基本ナマケモノだからぐだぐだしているとね、先生、なにしてんですか! って怒ってくれるの」
編集さん、そんな役目の人が側にいるのは良い事なのかどうか、うずめにはわからなかったがヨモギはそれはそれで楽しいんだ、とばかりにふふふふふと笑って話を続けた。
「銀色の髪の子はアシスタントさん。枠線やら、ベタやらをもう一台のパソコンを使って作業してくれるの」
アシスタントさんもいるらしい。
それはそうだよね。
「そしてね、このピンクの髪の彼女はね…なにを描くのか、とか、描いていることが自分に素直なことなのか、ってことの相談役なんだ。大切な事を話し合える、友達以上の存在」
そう言われて、ピンクのツインテの彼女は「いやいや、そんなことは」とか「本当にそんな助けになっているかどうか」といった謙遜するわけでもなく、てへへと柔らかくふにゃっと笑っているだけだった。
そして、ヨモギは言った「ねえ、うずめちゃん、マザーグースって知ってる?」
『マザーグース』? 聞いたことはある、絵本かなんかだっけ? 外国の童話じゃなかったかな?
「イギリスの子供向けの詩集なんだけどね。その中に『女の子はなにでできているか?』っていうのがあるの」
「なにで…できているの?」
「女の子はね、お砂糖とスパイスとそれと何か素敵なモノで出来ているだって」
「お砂糖とスパイスと…何か素敵なモノ?」
「マザーグースのこれを読んだ時に、私、あ! って思ったの、そうだよ! って思ったの。一人で本当に声だしちゃった!」
「お砂糖とスパイスとなにか素敵なモノ」
そして、ヨモギちゃんは言った「私にとって、この三人のツインテールのみんなが、スパイスで、お砂糖で、なにか素敵なモノなんじゃないかって思うことがあるんだ」
それを側で聞いていたピンクのツインテの彼女は、やっぱり「ふふふ」と笑っていた。
なんとなくだけど、うずめは黒髪のツインテの彼女がスパイスで、銀髪の彼女がお砂糖で、ここで今「ふふふ」と笑っている、ヨモギちゃんがマンガを描く時に、なんでも相談するというピンクの髪のこの人が…なにか素敵なモノなんじゃないかなって、思えたのだった。