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別冊レインボーに掲載されている、うずめと同じ女子中学生漫画家白玉ぜんざい猫先生のマンガは続く。
いつもの風景、いつもの友達との朝の挨拶。
けれども、今日のヤヨイはいつものヤヨイではない。誰にも言えない、肩の羽根。
学校の風景にずっとヤヨイの独り言が続く。
仲が良いと思っていた友達でも、この羽根の事は相談できない。
先生も、お父さん、お母さんも…
ヤヨイには片思いの男の子、まあず君がいた。
火星と書いてまあずと読む。
小学校からずっと一緒のまあずの事を意識し始めたのは昨年の秋だったが、仲が良すぎるもんだから、バカな話はいくらでもできるけれど、男女の距離に離れることがなかなかできない。
それが最近のヤヨイの悩みだった。
よく恋愛の相談で、距離が近くなりたんですが、どうすればいいですか? なんてのがあるのだけど、ヤヨイの場合は近すぎるからちょっと離れたいというもので、これはいくら検索してもあまり例がない。
はて、どうしたものか、と思案に暮れているうちに今日の今日、今の今になったというわけだ。
そのまあず君が「ヤヨイー!」肩に手を触れて来た。
「ちょ! やめてよ!」
羽根がばれないかと、咄嗟にきつく言ってしまったヤヨイ。
「ご、ごめんよ」
それから、まあず君と望まない距離ができてしまった。
誰にも相談できない羽根のこと。
この羽根は誰得なの?
一人悩むヤヨイ。
ある日、学校の体育で幅跳びの授業があった。
ヤヨイはあれこれ理由を付けて授業を見学する。完全防備で隅っこの方で小さくなっているヤヨイだが、クラスの皆が口々に「羽根?」「背中に!」「あれはなに? なんの羽根?」
大騒ぎを始める。
驚くヤヨイ。だが、みんなが注目しているのはヤヨイの羽根ではなかった。
クラスの女子、鈴木みかん。その背中にヤヨイと同じような天使の羽根が生えていたのだった。ただ、ヤヨイとちがうのは、みかんはそれをまったく隠そうとせず、小さく羽ばたかせながら走り、地面を蹴り、幅跳びしていたことだった。
ジャンプしているわずかな時間、みかんは羽根を羽ばたかせていた。みんなの視線が小刻みに動く背中の天使の羽根に集中する。
もちろん、小さな小さな羽根だから、それを羽ばたかせたからといって幅跳びの飛距離が伸びるというものではない。
それでも、それでも、それを見るみんなの顔の驚きと喜びの入り交じった不思議な表情にヤヨイは少なからず衝撃を受ける。
その羽根なら私にだってある。
でも、ヤヨイはその羽根が、恥ずかしいものだと思っていたばっかりに…
その夜、羽根が取れて落ちた。
ヤヨイはヤヨイに戻った、と思った。
これでよかったかもしれない。と。
だが次の朝のこと。
「まだ寝ていたーい」とつぶやきながら「うーんっ」と伸びをするヤヨイ。
「なんか肩が凝ってる、寝違えたかな?」。
このマンガの始まりと同じ光景がくり返される。
ただ、違うのは背中に生えているのは、小さな羽根ではなく、立派な天使の羽根だった。
そして、ヤヨイはそれを隠すことなく、学校へと出掛けていく…