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しめじは会場の隅に立つ恐竜を見上げていた。
高さ八メートル、頭の先から尾の先までの全長は十六メートルとい堂々たる恐竜のディスプレイ。
その側には『AI搭載自走式実物大ティラノサウロス』という看板が掲げられている。
東京東西工科大学の仮想現実化研究会のブースだった。
ティラノサウロスは白亜紀の北米大陸に生息した肉食恐竜であった、と展示してあるパネルに書かれていた。
しめじは遙か上のティラノサウロスの頭をそっくり返って見上げながら「ひょええぇぇえ」と笑っていた。
そして、リアルな恐竜の皮膚に触れて「ははは」と笑う。
だが、そのしめじの笑みが急に止んだ。
恐竜の目が…こちらをギロリと睨んだ気がしたからだった。
それは、気のせいではなかった。
ティラノサウロスの首がゆっくりと下を向き、その瞳はしめじを捉えた。
ブースの中、この恐竜の制御を担当しているPCのモニター画面の中『AI起動』という赤い表示が点滅していることを誰一人、気づいてはいなかった。
恐竜は低い声を発した。
それは言葉だった。
「オマエハ…ダレ?」
「私はしめじ」
しめじは答えた。