◆PV ◆ラジオ ◆インタビュー ◆ノベル ◆サウンドドラマ ◆キャラクターボイス ◆レポート
マドレーヌは白衣の男にまた別のブースの中で薬指の大きさを測ってもらっていた。
「今、この場で貴女に指輪をプリントアウトしてさしあげます」
指輪をプリントアウト?
マドレーヌはきょとんとしている。
指のサイズを入力し、刻みつける模様を指定すれば、それがすぐに立体、つまり本物の指輪としてその場で精製されるというのだ。
「ここに用意したプリンタは最新式の3Dプリンタでね。それを僕ら大国際大学夢追いプロジェクトがさらにカスタマイズしたんだ」
マドレーヌに声を掛けブースまで案内してきた白衣の大学生は普段からその白衣を愛用しているのか、胸元のポケットには筆記用具を詰め込めるだけ詰め込み、裾には無数の珈琲の染みがあった。しかし、風貌はといえば短く刈り上げた頭に黒ブチのメガネというバリバリ実験と研究と実験の日々こそがリア充であると言い切るであろう才能溢れる引きこもり系に見えた。
そして、側にある三十インチのディスプレイの中に幅三ミリの指輪にぐるりとカエルの指揮者による、カエルの交響楽団が演奏を続ける様が描かれた完成見本がゆっくりと回転している。
「素敵…」マドレーヌが思わずそんな言葉を漏らした。そして「こういう研究をいつもなさっているんですか?」と聞いた。
「本当はね、今日はもっと盛大なイベントを企画してたんだけどね。あれ、あるだろ」白衣の彼が指し示したのは、しめじが見上げているティラノサウロスだった「あれと同じものを僕らも造ったんだが、このコミフェスの倫理委員会から、危険すぎるから搬入させない、と言われたもんで」
「危険すぎる?」
「僕らが造った恐竜はね、体が銀色なんだ、金属が剥き出しでね。それで印象が悪かったんだと思う。あそこのティラノサウロスだって、皮をむけば同じなんだけどね」そして、彼は残念そうに付け加えた「奴と僕らの恐竜とを戦わせようって、話だったんだけどね、最初は…」