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「マスター!」ささらの声、うずめが振り返った。
カティアも一緒に居て、二人とも画を持っている。
「どこ行ってたの!」という、うずめのちょっと怒った問いに二人が答えるはずもなく手にした画を、うずめに見せた。
似顔絵だった。
パソコンのお絵かきソフトで描いたものをプリントアウトしたのだろう。
特徴をとられていて、なかなかかわいく描けている。
今、会場の端の方で無料で似顔絵を描いてくれる人がいるらしいのだ。
ささらが自慢げに言う「いちおうプリントアウトしてもらったのがこれなんだけど、データでももらったから私達の部屋マニホールド空間に飾っておこうと思って」
ドールが生活している世界、彼女達の部屋、それがマニホールド空間。
「いいな、私も描いてもらいたいな」思わずうずめはつぶやいた。
「マスターは、きっとそう言うと思った」と、カティア。
うずめの前に二十五番です! と色鉛筆で手描きされた整理券が、ささらによって差し出された。
「整理券?」うずめは聞く。
「もらっておいたよ、マスターのためにね」
なんとも気が利くうずめのドールである。
うずめが「ありがとー」と礼を言うと、ささらは「マスターはほら、人が持っていると欲しがるんじゃないかなって思って」と言う。
さらにカティアは「そうそう、それで自分の分がないって言って、すねるんだよ」と追い打ちをかけるように言う。
「だよね、あははは」と、ささらが笑いだしたために、うずめはそれ以上、なにも言う気にはなれなかった。
しかし、黙っていたら黙っていたでカティアはさらに「マスター、いつもの三割増しくらいでかわいく描いてって言わないとだめだよ」と言い、ささらがまた「五割り増しでお願いしますって、言っておいた方がいいかも」と続ける。
そして、ささらとカティアは交互に「瞳を青で描いてもらえば? カラコン入れたみたいに」「ああ、カティア、それいいね。じゃあ、エクステをつけた感じで何本か髪の毛に色つけてもらうってのは?」「口元をキュートにするために、ちょっとアヒル口にしてください、ってのは」「ほっぺも少しほっそりさせてもらった方が…」
うずめが止めなければドール達、いや、ドールどもの言いたい放題はどこまでも、いつまでも続きそうだった。
「それでなに? どこに並べばいいの?」
整理券を手に、うずめは語気強く言った。
ささらが指差す方へ向かおうとするうずめに、カティアが言った。
「そうそう、この絵師さんね、マスターと同じ年なんだって」
うずめはびびる「え? 私と同じ年で、こんなに画が上手いの?」
それだけじゃないよ、とささらが続けた「この前の別冊レインボーに読み切りで漫画家デビューしたんだって」
「デ、デ、デ、デビュー? じゃあ、もうプロの漫画家さんってことじゃない? すごーい!!!」
似顔絵の横にはカティアさんへ、白玉ぜんざい猫というサインが添えられている。
白玉ぜんざい猫。
それがペンネームなんだろう。